時にも、妖怪扱いされてきた。ソ連が本当に強力になってからは、推して知るべしである。現在のソ連が強力であることを否定するつもりはないし、ソ連が努力を注いできた確固とした防衛能力を持っていることを否定するつもりもない。
- まさに、そのソ連の力が恐怖を引き起こしているのではないか。
A まず第一に、ソ連は強力ではあるが、優位に立っているわけではない。つまり、相手の方が弱いということではない。第二に,そういう恐怖は、ソ連に強力な軍事力がなかった時でさえ、誇張して言いふらされた。
一例として、第二次大戦直後の状況を思い出してみよう。当時、ソ連は戦争でひどい被害を受けていた。それに対し、アメリカは一段と強力になり、核兵器を手にし、世界を意のままに動かすため、核兵器を独占しようとしていた。
- ヒトラーの焦土作戦の結果、一九四五年当時、ソ連には核兵器の製造を始めるよりも緊
急性を要する優先課題があったことは認める。
A 言うまでもなく、ソ連は国力を緊急性のある別の計画に注ぎ込みたかった。しかし、アメリカが力によって得た地位を利用しばじめたので、ソ連も対抗する以外に道はなかった。
この点については、冷戦の歴史について論議した際に触れた。ソ連は第二次大戦直後にアメリカの挑戦を受けたので、防衛を最優先課題とせざるえなかった。軍拡競争がそもそも始まったのは、このアメリカの政策のせいである。そして、いまだにアメリカは軍拡競争をソ連に押しつけている。
- アメリカ側は、その正反対のことを言っているが。
A そういうことを言う人たちは、ソ連がつねにアメリカを後から追いかける立場にあったという事実を忘れているようだ。アメリカがまず核兵器を保有し、ソ連もこれを手に入れざるをえなかった。