- ミサイル・ギャッブはまったく存在しなかった、というのか。
Aギャッブはあったのだが、正反対のものだった。アイゼンハワー大統領の科学技術担当顧問だったジョージ・キスチャコウスキーは「実際には、アメリカのほうが有利というのが、真のミサイル・ギャッブだった」(前掲書、五九ベージ)と後に証言している。
- このミサイル・ギャッブは例外的なケースではないのか。
A 私が知る限り、これは例外ではない。ニセの「ソ連の脅威」によって国民をだまし、おびえさせるため、どんな政府機関でも意のままに操れるきめ細かな機構が活動している。
たとえばリチャード・ヘルムズは最近出版した本のなかで、CIAが国防総省から執拗な要求を受け、どのようにしてソ連のミサイルについてのあからさまな偽情報を作り上げたかを記している。この偽情報は、ソ連のSS9ミサイルが一九六〇年代末期にMIRV化していたという内容で、この推測はすぐに、完全に間違いであることが判明した。
さらに、SALTの進展を妨げようとして行なわれたさまざまな情報漏洩など、この種の話は幾らでもある。これらの事実は、「ソ連の脅威」という幻影がアメリカの軍事費を決定する過程や軍事計画の一部として、いかに深く組み込まれているかを示している。
- こうしたことはみな、権益集団の利益と政治的計算がもとになっている。
A それに国民に対するごまかしもある。海外で起きていることについて国民をだまし、国民に膨大な軍事費を負担させ、さらに必要もないのに、アメリカを危機や外国との紛争に巻き込んでいる当の連中は、どういうわけかこれまでまったくその責任を問われていない。
それどころか、一九五〇年代末や六〇年代、七〇年代など、軍事問題について重要な長期的決定が下された大事な時期に、決まって国民を誤った方向に導いたグルーブの一部の人たちが、現在でも活躍