し、ソ連軍部の指導者はもちろんのこと、ソ連国民の誰ひとりとして、このようなことを書いたり、発言したりした者はいないと断言できる。
- しかし西側でこの問題を論じる場合、論文や発言からの個々の引用だけではなく、ソ連
の軍事理論全体を引き合いに出している。
A それはよくわかっている。しかし実際には、ソ連の軍事理論についての結論は、個々の引用を根拠として導き出されているではないか。ここで詳しくは述べないが、重要な点だけ強調しておきたい。それは、ソ連の軍事理論が厳格に防衛的性格のものだということである。このことに、核兵器の使用問題についてのソ連の立場を見れば、明確に示されている。ソ連軍最高司令官であったブレジネフ元帥の発言をこの点について最も権威あるものとして引用したい。
ブレジネフ書記長は「われわれは、核兵器の使用に反対する。他の核保有国が、ソ連またはソ連の同盟国を侵略するという異常な状況が発生した場合にだけ、やむなく自衛の最後の手段として核兵器使用に踏み切らざるをえないかもしれない」(一九七八年四月二五日の演説)と述べている(L・I・ブレジネフLeninskim kursom 第七巻、三〇〇べージ)。
核兵器の第一使用問題について、やはりブレジネフ書記長の発言を引用したい。
一九七七年初め、トゥーラ市で「われわれの努力はまさに、第一撃、第二撃を回避すること、すなわち核戦争そのものを回避することに向けられている」(一九七七年一月一八日の演説)と述べた。またウスチノブ国防相は一九八一年七月二五日のプラウダ紙上で「どんな形態、規模であれ、拡張主義者の予防的戦争や、先制核攻撃という概念は、ソ連にとっては無縁のものである」と述べている。
ブレジネフ書記長やウスチノフ国防相、そのほかのソ連指導者の同趣旨の発言をさらに引用することもでぎる。これらの発言の要点は、戦略核戦力の使命を、戦争の抑止にあるとみなしているという