ローマ.クラブ
人間がその知識と力の絶頂に達した今日、深刻な不安が人類社会全体をおおっている。人類の直面する諸問題は、相互にからみあいながら日ましにその複雑さを加え、たえずその性格を変化させている。その中には政治的.文化的.および地理的なあらゆる境界をこえたものもあり、人類はかつてない危機的な状況のもとにおかれている。
一九六八年の四月、ローマのリンチェィ.ァヵデミーに、ョーロッパの三十人の科学者.人文学者.教育者および経営者が、この世界的な問題複合体をいかに理解し、いかに対処するかを論じ合うために集まった。参加者の中から、この会を非公式のグループとして残そうという提案が出された。このグルーブのメンバーとしては、既存の制度や政策はこの危機的な状況にもはや対処できないばかりか、その動向を見て取る能力を失っているという確信を共有する、あらゆる大陸、あらゆる文化、あらゆる
価値観の持主の中から選ばれた、洞察力と行動力とを持つ人々を加えることが提案された。
このグループは、「ローマ.クラブ」とよばれるよぅになつた。グループのメンバーの総数は、百名をもって限界とする。いずれのメンバーも、現在の政治的な意思決定機構には関与しておらず、また全体としてのローマ.クラブはいかなるイデオロギー的、政治的、もしくは国家的なコミットメントをも行ぅものではないが、クラブのメンバーの多くは、政治的な意思決定者達と密接なつながりを持ち、また利用し得る大量の情報および知識の蓄積の持主達である。
ローマ.クラブは、二つの主目的を持つ。その第一は、地球的な規模のさまざまなシステムの働きに関するより深い理解の獲得を目標とする研究や思索を促進することである。ローマ.クラブの第ー段階においては、この側面の活動は主として、『成長の限界』に関する研究に集中した。この報告書か、本書に収録されている対談の主たる話題となっている。第二の目的は、この種の研究の結果として得られた洞察を応用して、新たなヒューマニズムの精神に鼓舞され、人類社会の未来をより健全な軌道
の上にのせることを可能にするよぅな、新しいさまざまの政策や戦略の形成を促進することに、おかれている。
アウレリオ.ベツチエイ
(ローマ.クラブの創立者兼会長)