す上がってしまいます。先進国においては、まだ、人々はこのょうな状態もどうにか切り抜けることができます。それにもかかわらず、世界の食糧事情に人々はしかるべき注意を払っているとは全く思われません。普通は、人々が事態の推移をラジオやテレビ等でょうやく知り、初めて対策を講じるのが常なのです。
今のお話を聞いていて私は禿鹰が人間の死体にたかっているのを描写していたオランダのテレビ映画を思い出します。その映画はバングラデシュへの救援金を集めるために製作されたものでしたが、その効果はたいへんなものでした。一夜にして一千万ドルも集まったものです。
同様なことが、現在飢饉に苦しめられているアフリヵのサーヒル地域において起こっているのです。この地域の住民が実際に飢えている状況がテレビで報道されるや否や、世界は感銘を受け始めました。多数の死者が出て初めて人々は心配し始めるのです。人間というのはそういうものなのです。仮りに私などが一般的観点から語り、事態が更に悪化し得ると警告を発したとしても、人人は現実に危機が到来するまで静かに待つのです。現実の危機に直面しない限り、最も深刻な警告も全く効果が無いのです。
あなたは、テレビが正しく利用された時の、きわめて有用な側面のことを指摘されたことになりますね。
まさにそうです。あれは確かC・P・スノーだと記憶しますが、彼は、ブラゥン管の上で人々が実際に死んで行く様が写し出されて初めて、世界は真の緊急事態を認識できるのだ、と言つたことがあります。
第二次大戦の最後の数日間のことですが、アメリカやィギリスの爆撃機から大量のバンを投下していたのを今でも覚えていますが、これはオランダの飢餓地域にスゥェーデンの赤十宇社から贈られたものでした。アフリカのサー匕ル地域はまさに当時のオランダのような状況にあるのです。にもかかわらず、何千機もの飛行機を遊ばせている世界各国が、なぜこれらの飛行機を使って飢えとの戦いを遂行しているアフリカ諸地域に食糧を運んでくれないのでしょうか。
残念ながら、そうした輪送を組織することはできないでしょう。少なくとも現時点ではできません。現在支配